皆さま、こんにちは!楽しい毎日をお過ごしでしょうか?
笑っていらっしゃいますか?
この原稿を書いている私は、新作の公演を控えてギリギリいっぱいですが、なにかとゲラゲラ笑っております。
笑う門には福きたる!
今日おもしろかったことは、5歳の友人がスライムについてこう説明してくれたことでした。
「スライムをさわると、ゆびでトランポリンしてるみたいなんだよ!」
ナイス弾力。
今回も私が2015年にウィーンで出会った女性クラウン(道化師)たちについてお話ししてまいります。
Here we go!
<クラウンシリーズ>
○ 小心ズ、ワールドコメディの旅 女性クラウンの国際シアターフェスティバル①
○ 小心ズ、ワールドコメディの旅 女性クラウンの国際シアターフェスティバル②
文化の厚みと優美さを誇る歴史の深いヨーロッパ
これまでカナダやアメリカでの活動が主だった私にとって、ヨーロッパの持つ歴史の豊かさ、文化の深さというのはとても新鮮でした。
ウィーンは「音楽の都」として世界的に有名で、幼い頃にピアノの教科書で知った名だたる音楽家たちを育んだ土地でもあります。
モーツァルトが住んでいたという建物を訪れた際には、「モーツァルトって実在したんだな……。」と、じわりと感激したものです。
クラシック音楽、オペラ、バレエ、演劇、サーカス……、圧倒的な文化の厚みを持つヨーロッパの空気は、厳かで揺るぎなく、懐の深い印象でもありました。
魅力的で素晴らしい偉大な世界の先駆者たち
そんな重厚な歴史を持つヨーロッパ各地からも、トップクラスの女性クラウンたちが来ていました。
たとえば、フランスのベテラン、コレット。
彼女は世界的名門であるジャック・ルコック国際演劇学校の出身で、さまざまなキャリアを積んでいました。
クラウンだけでなく、バーレスクの経験もあるとか。
さらには、ドクター・クラウンまたはホスピタル・クラウンと呼ばれる仕事も20年以上にわたって続けており、病院に長期入院している子どもたちのための活動も行っていました。
彼女のショーはセリフを使わず、ジブリッシュ(gibberish=意味のないめちゃくちゃ語)のみですが、そのキャラクターは強烈で、大人なのか、子どもなのか、もはや動物なのか、妖怪なのか、わからないくらいでした。
客席は爆笑につぐ爆笑で、満場の観客が腹を抱えて笑います。
自分よりはるか年上の、しかも女性のクラウンたちがたくさんいるということ。
彼女たちが一流のパフォーマーとして、今なお第一線で活躍していること。
その実力、その経験、器の大きさ。
自分の狭い世界では、すっかり歳をとったと感じることも少なくありませんが、こうして世界と出会ってみると、偉大な先輩たちが実にたくさん、頼もしく、まぶしいくらいに存在してくれているのです。
まだまだ目指すべき先がある。
憧れるべきひとたちがここにいる。
人生はもしかしたら長いのかもしれない。
そういう希望を見出せたことも、ウィーンでの大きな収穫でした。
フェスティバル期間中、パネルディスカッションも開催されました。
前述のコレットのように、「ドクター・クラウン(またはホスピタル・クラウン)」として、病院内でパフォーマンスを行うクラウンや、世界中の紛争地域や貧困地域に赴いて長期にわたって活動を行う「国境なきクラウン団」の経験のあるクラウンなどが、「危機的状況におけるユーモア」というテーマで話しました。
笑いというものが、危機的状況のなかでどのように機能するのか。
クラウン(道化師)が担う役割とはどんなものなのか。
クラウンと一般的なコメディとの違いとは。
ここには書ききれませんが、ベテランのクラウンたちの実際の(時に壮絶な)経験に基づいた、非常に奥行きのあるディスカッションが展開されました。
手法も幅も見せ方も風貌もバラバラ!奥深いクラウンの歴史とその存在
クラウンとはいったい何者なのか。
このウィーンでの多くの出会いを経て、その謎は深まるばかりでした。
一言でクラウンと言っても、
・劇場型クラウン
・サーカス型クラウン
・大道芸型クラウン
など、その幅は広く、さらに、
・ことばを一切しゃべらない
・ジブリッシュ(めちゃくちゃ語)をしゃべる
・一般言語をベラベラしゃべる
などの手法もバラバラ。風貌にいたっては、
・赤い鼻をしている/していない
・地肌色をしている/白塗りをしている
・特殊なメイク/ナチュラルメイク
と、これまた果てしなく自由です。
キャラクター(性格)はと言えば、
・のんびり屋
・おこりんぼう
・泣き虫
・意地悪
・お人好し
・赤ちゃんのように無邪気
・卑屈
・高度に知的で辛辣
など、一般的に日本人が抱く「ピエロ」のイメージをはるかに超えた種類が、無限に存在します。
こうしてクラウンの大海に溺れそうな気分で、尋常ではない緊張のなかで迎えた自分の公演当日。
もはや「歴史あるヨーロッパ」に胸を借りるつもりで臨みました。
音楽の都ウィーンの劇場を埋め尽くす、通路にまで座る観客、立ち見の観客たち。
クラシックについてもクラウンについても、耳と目の肥えた人びと。
一流のベテラン・クラウンたちも観ています。
ミスしゃっくりは、いくつものクラシック音楽を生の声で歌います。
終演後のカーテンコールで彼らから送られたのは、経験したことのないほどの鳴り止まぬ拍手と歓声でした。
何度も何度もステージに戻り、ようやく私が発した挨拶は、ウィーンに来て最初に覚えたドイツ語、
「ダンケシェン!(ありがとう!)」
そして
「ブロースト!(乾杯!)」
でした。
客席は再びの爆笑と拍手で応えてくれました。
またいつの日か、あの舞台に立てることを願いつつ、今できることをこつこつと続けていこうと思っています。
どんな危機的状況でも、笑いを生み、届けていきたい。
たとえかすかな笑いでもいいのです。
今回もおつきあいありがとうございました!
皆さまの冬が、心も身体もあたたかくありますように。あ、できれば懐もね。