こんにちは。
「ことばのき」代表の西 悠子です。
ユウコの世界の教育事情アレコレもVol6となりました!
VOL4から、3回にわたってスウェーデンにする日本人エマ・アンデションさんへの現地インタビュー編でお届けしており、今回がその最終回です!
見逃した方は、こちらからシリーズをご覧くださいね^^
「ユウコが旅する世界の教育アレコレVOL4~スウェーデン編①」
「ユウコが旅する世界の教育アレコレVOL5~スウェーデン編②」
毎回、スウェーデンの大自然やその自然に溶け込んだ生活が垣間見える素敵なお写真がたくさんでとっても癒されます♪
そして、国全体で「子どもを資産」と考えて大切に育てている環境や「個を大切にする」教育など……学ぶことが多い国だと感じています。
今回はいよいよ最終回!
スウェーデンの教育の中で非常に大切にされている「読む力」やある一つの先進的な教科などについて掘り下げてみたいと思います!
「読む力」が何よりも大切!
▲森と湖の国スウェーデン。夏は湖水浴、冬はアイススケートリンクになる湖の上で
ゆうこ
いよいよ最終回となりました。スウェーデンのことがだんだん身近に感じられてきて、イメージしていた通り……いや、それ以上に素晴らしい国であると感じています!
エマさん
私も、日本の皆さんにお伝えしたいことがたくさんあって、3回では足りないくらいです!今回もよろしくお願いいたします。
ゆうこ
スウェーデンの教育現場では「読む力」を養うことが何よりも重要とされているということで、今回はそこを深く教えていただきたいと思います!
エマさん
はい!こちらでは「読む力」を養う事が何よりも重要視されています。でも、だからといって私の子どもが通う学校では、本読みを強要するわけではありません。 一週間に一度、本読みの宿題の提出があるのですが、その一週間で本を読む回数は自由で、しかもその本は、宿題として出された学校の教科書ではなく、場合よっては、子どもが興味を持って読める本でもOKなんです!
ゆうこ
「読む力」はこれからの時代に欠かせない力だということは、私も強く感じています! でも、その"読むこと"自体を好きになるように誘導していく方法が日本とは全く異なりますね……日本の小学校では音読の宿題は毎日ある。しかも読むお話は指定されています。
エマさん
日本人の私からするとスウェーデンの方法はゆるいようにも感じるのですが、学習とは無理強いされてするものではなく、子ども自身が好奇心を抱いたまま、興味をもって学んでいくというプロセスが重要かなと。 そういった観点からも、学校側は柔軟にそれぞれの子どもにあった対応をしているのだと思います。
ゆうこ
"子どもの好奇心を伸ばしていく"ってとても大事なポイント!それを仕組みとして実践しているというところが素晴らしいですね。 前回お伺いした長所を伸ばすという点とも共通しているように感じます。
若い世代にとっては当たり前!「メディアリテラシー」科目
エマさん
私の子ども達はもう……毎日の音読には耐えられない性質になっているかもしれません(笑)。 その他には、インターネットの普及に伴って、数年前からスウェーデンの学校教育に「メディアリテラシー」という科目が追加されていることにも注目しています。
ゆうこ
メディアリテラシー??日本ではあまり学校の授業としてはなじみのない言葉ですが、どういう内容ですか?
エマさん
メディアリテラシーとは、メディアを通じて正しく情報を収集するための教育です。あふれる情報の中から必要な情報を取捨選択する能力や、それらを適切に評価・判断する能力を身に付けることで、小学校のうちから情報元の取り扱いを徹底して学ぶのだそうです。
ゆうこ
すごい!!本当に今の情報化社会において必要不可欠な力ですね。そして、それを学校教育の科目にいち早く取り入れているというところが、さすが「真の先進国」という感じがします。
エマさん
そうなんです!私も、私が通っている学校の社会科でこれを学びました。 「メディアリテラシー」とは、例えば高学歴の人たちだけが持つ"技能"といったものではなくて、政治や社会がきちんと機能するためにも、国民のどの層にも広く行き渡るべき大切な"教養"だと思います。日本でも義務教育の中でしっかりとこれを学ぶ機会があるのではないかと、大変気になっています。
ゆうこ
日本では、タブレット学習やプログラミング教育が始まったところですが「メディアリテラシー」という教育はまだ大々的に注目されているわけではないかも…… でも、プログラミングなどよりも大切な気がします。
日本のような「音楽」「体育」の授業はない?
▲フィンランドも湖が多いことで有名ですが、1ヘクタール(100m四方)以上の大きさを持つ湖の数でいうと、フィンランドの約57,000湖に対して、スウェーデンには約95,700湖もあります。湖水浴は、スウェーデンの夏の風物詩です
エマさん
だけど、一方で日本人の私にとっては、日本の学校教育のほうが魅力的に感じられる点もたくさんあるんですよ^^
ゆうこ
そうなの?例えばどういう点が魅力的に感じるのですか?
エマさん
例えば、日本の音楽の授業での楽器に触れる機会の多さや、美術での上質な筆を使っての描画や、理科の充実した実験教材など……それら全てがスウェーデンでは一般的なことではありません。 ほかにも、日本の体育の授業では、かけっこやマラソン、縄跳びに体操、バレーボールなどの球技に水泳など、たくさんのスポーツを学校教育の中で体験し、技能を身につけることもできますよね。
ゆうこ
え??音楽や図画工作、理科、体育などはスウェーデンで学ばないのですか?むしろ、そういう情操教育の部分に力を入れているのかと勝手に想像していました。
エマさん
もちろんそれらの科目も修得するのですが、日本の授業のような一歩踏み込んだ体験をしたければ、学校ではなく親がお金を払って子どもを習い事に通わせることになるかと思います。 うちの子ども達はスポーツクラブと理科コースに通っていますが、その点において日本の学校教育は、スウェーデンから見ると高度な教育そのものといった感じで、まるで夢のようですよ!
ゆうこ
当たり前に音楽や図画工作、理科の実験や体育など学校で学べていることは、実はとても恵まれているという事なんですね。
エマさん
そうですよ!とても恵まれています。 とはいえ、私個人としては、それら全ての体験が義務教育に必須だとも思わないので、スウェーデンでは無駄を削って経費を削減するという意味からも、授業に含まれていないのは不思議ではないなとも感じています。
「国民力」が高い国=日本
▲湖畔にある街の古いカフェの店内(4月)。田舎とはいえ、新型コロナによる自粛さえなければ人で賑わっているはずの人気のカフェ。「集団感染」は決してスウェーデンのコロナ対策ではなく、個々の立場で各自の自粛生活を送っているそうです
ゆうこ
国によって教育内容は大きく異なるのですね。エマさんは、スウェーデンに12年間住んでいらっしゃるとのことですが、スウェーデンからみた日本ってどんな風に見えているのですか?
エマさん
スウェーデンは、「福祉」「環境」「教育」の先進国として知られていて、実際に私はそれを日々の生活でも感じています。 だからこそ、スウェーデンから見た日本は、子どもを含め社会的に弱い立場にある者に対してあまり優しくない国、といった印象を持っています。
ゆうこ
私は、若いころ途上国などで働いてきたので「日本は恵まれている」と思っていたけど、スウェーデンから見ると違ってみえるんだね。
エマさん
社会的弱者への配慮や環境問題などは、スウェーデン社会においては最優先に考えられるような課題なのですが、日本では無視されていると感じます。 ちょうど日本語の"勝ち組・負け組"といった表現にも見られるように、日本では経済的に成功することが全てであるかのような価値観が浸透していて、結局それが、社会的弱者や後世にシワ寄せがいくような"負の連鎖"の社会構造を作ってしまっているようにもみえます。
ゆうこ
たしかにそういう点はあるかもしれません。経済が成長していく一方で、格差が浮き彫りになってきているし、今回のコロナでよりその格差がより開くともいわれていますよね。 今後、人口が減少し、高齢化が進むといわれている日本が学ぶべき点がスウェーデンにはたくさんあるのかもしれませんね。
エマさん
でも一方で、日本人ほど発想力や創造力といった「一人ひとりが持つ能力」が高い国民はいないとよく思います。 アニメ、マンガ、ファッションにキャラクターなど、日本が発信するサブカルチャーはもちろん、TSUNDOKUやEMOJI、ORIGAMIなどの文化も、日本語の読みのまま欧米に浸透していて、嬉しいですよね!
ゆうこ
それはまた意外な視点です!「発想力」や「創造力」といえば、IKEAやH&Mなど、スウェーデンのうほうがたけているように感じるけど、センス?テイスト?が日本とは違うのかな^^
エマさん
どちらも違って、どちらもいいですよね(笑)。あと他に異なる点といえば、日本では、学校のPTAの活動や、地域活動、学校行事の準備や毎日の宿題のサポートなど、親の役目が多くある印象ですが、スウェーデンではそのような役目は親にはありません。 こういう点でも、日本って国民一人ひとりの能力=「国民力」がすごく高いなぁ!とよく思います。
ゆうこ
日本に住んでいたら「国民力」って実際になかなか気づかないけどね。
エマさん
また、日本とスウェーデンとでは人口に大きな違いがあって、日本の総人口が1億2千万人を超えるのに対して、スウェーデンの総人口は約1千万人と、東京都だけの人口(約9百万人)とあまり変わらないんです。 この人口の少なさが、日本よりも統率の取りやすい社会であることや、国民一人一人の政治参加の意識の高さに影響しているのは確かだと思います。
ゆうこ
そんなに少ないんだ!でも、だからこそ、これからの少子高齢化社会を迎える日本が学ぶことたくさんある気がしますよね。
エマさん
公平で誰もが人間らしく生きられる社会の実現は、スウェーデンでも日本でも結局は「国民」にかかっている。 そう考えた時に、つくづく重要になってくるのが「人材の育成=教育」だと感じています。
ゆうこ
日本でも教育において、問題点は常に指摘されるけれども、やはり、とても優れていると私は思っています! 時代の変化に合わせて問題点が出てくるのは当たり前で、それを修正しながらやっていくべきだし、大切な部分は残すべきだと思っています。そういう視点からも今回のお話もとても勉強になりました!最後になりますが、エマさんの今後の夢や目標があれば、教えてください!
エマさん
私は、ここでスウェーデンの教育学に触れ、大変感銘を受けたので、可能であれば今後その分野を学びたいと思い、現在はその準備のためスウェーデンの中等教育(高校)の修了を目指して学校に通っています。 実はこれに関しても学費は無料で「スウェーデンの住民ではあるけれど国民ではない」という私に対しても、国は給付金と低金利の奨学金で経済的な援助をしてくれます。
ゆうこ
大人が学びなおしたいとき、しかも、外国人にも同等の手を差し伸べてくれる環境があるなんてすばらしいですね!どれだけ、「人材の育成=教育」を大切にとらえているかがわかりますね。
エマさん
はい!このように、様々な形で国や社会から手助けを受けられて、私はスウェーデンに感謝しているので、時期が来れば必ずこの社会に貢献したいと思っています! 国とそこに暮らす住民の健全な相互関係こそが、社会をうまく機能させていることをここスウェーデンで実感しています。そして、私の母国の日本でも、日本に暮らしているあらゆる人々が、自分の住む地域に貢献したいと思える日本社会があることを願ってやみません。
ゆうこ
国民のどれだけの人がこの国に貢献したい!思っているだろう……こんな議題も含めて、とても有意義な視点をいただいた気がします。3回にわたってのインタビュー、本当にありがとうございました!
▲各地方で盛んに開催されるマーケット。できる限りの地産地消を目指し、地方の小売業者の経営を地域で応援!
おまけトーク♪
▲ヨータキャナル沿いの、秋の恒例マーケット。季節がら、地元で収穫された林檎のムスト(生絞りりんごジュース)や野菜の買い入れがメインです。毎年、収穫した自分の林檎を持ち寄って、そのキロ数に応じた量のムストと交換してもらえるのですが、今年はマーケットも開催されず……
エマさん
そういえば、私にとっては、スウェーデンのシンプルな食文化を知ったことで、調理の際の日本人の知恵や工夫がどんなに素敵なものであるか、改めて知る良い機会となりました。 たとえば、調味料の基本「さしすせそ」野菜の下茹で、面取りに呼び塩に隠し味……と、一般家庭でも日常的に、そういった知恵や工夫をもって日々調理する日本人の凄さには、改めて感激、感動します! 普段スウェーデンでの食事では、素材そのものの味を堪能するような料理は多くても、あまり工夫や知恵を必要とするような料理を頂く機会があまりないので……^^;
ゆうこ
わかります~~!日本食ほど繊細で奥深い食事ってないですよね!
さて、3回にわたってお届けしてきたスウェーデン在住のエマさんのインタビューはいかがでしたでしょうか?
学ぶことの多いお話が多く、私もとても勉強になりました。
人間の"個"を尊重する教育内容と国全体で"資産"として育てていく環境、そして、国民が国に貢献したいと思うほどの"信頼関係"……どれをとっても素晴らしいと感じました!
機会があれば、ぜひとも!スウェーデンに行ってみたいですね♪
マネトラユーザーの皆さんにも、スウェーデンインタビューを通じて、新たな発見や気づき、挑戦のきっかけになれば嬉しいです^^
最後までお付き合いくださった読者の方々、そしてエマさん、お忙しいところ本当にありがとうございました!
国語専門幼児教室「ことばのき」
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