皆さまこんにちは!How are you?
すくすくと成長していたひまわりの芽が、突然なぜか立ち枯れてしまい、ガックリ意気消沈のヤノミです。
小さな庭にもドラマがいっぱい……!
さて、モントリオールで世界中のバラエティ豊かな演劇に出会った2007年。
さらに詳しくそのようすについてお伝えしてまいります。
今回もお楽しみいただけたらうれしいです!
フリンジのあらゆる側面
フリンジにはキャバレースタイルの劇場も多く、お酒を片手に楽しめるショーや、観客巻き込み型のものや、観客を外に連れ出して歩きながら上演されるものまで、ほんとうに自由です。
子どもが観ても楽しめるもの、大人しか観てはいけない過激なもの、社会問題を深く取り扱ったもの、とにかくくだらないもの、実験的なもの。
これほどぎっしりの宝箱の中で、自分のショーを宣伝するのもまた大変なことです。
フリンジにはシビアでタフな側面もあるのです。
口コミが最重要
今では日本にも浸透した「バズる」という言葉。元々は英語のbuzzから来ており、蜂がブンブン飛び回ることや、人がガヤガヤ噂をすること、そして「クチコミ」を意味するものです。
モントリオールには、観客のクチコミを掲載する「フリンジ・バズ」というシステムが早くからありました。
フリンジパークと呼ばれる広場には、野外ステージがあり、バンドの演奏の横にはビアテントと屋台が並び、観客やアーティストやボランティアやスタッフたちが、いつでも賑やかに語らうことができます(フリンジのスポンサーでもあるサンアンブロワーズの地ビールはほんとうに美味しいんです……!ああ、飲みたい……)。
その広場の一角に、観客がショーの感想を手書きし、思い思いに批評したりおすすめしたりするフリンジ・バズのフェンスがありました。
びっしりと貼られた感想や批評の紙切れ!
タイトルやアーティスト名や劇場名とともに、
「5ツ星!絶対にオススメ!」
「こんなに笑える作品はない。最高。」
「感動した。家族にも見せたい。」
などなどの熱い文字が、日ごとに増えてゆくのです。
その山のようなバズの中に、自分のショーについて書かれたものを発見した時のうれしさと言ったら!
小心ズというまったく無名の日本人のコメディは、観客のクチコミでどんどん広まり、千秋楽には立ち見が出るソールドアウトになったのです。
生まれて初めてのスタンディング・オベーションを経験したのも、このモントリオールでの出来事でした(ちなみに今までのバズで一番うれしかったのは、2010年にバンクーバーで見つけた「Miss Hiccup ROCKS! ミスしゃっくりはロックだ!」です)。
レビューはコワイ?ありがたい?
また、フリンジには多くのメディアも参加し、テレビやラジオ、新聞や雑誌やウェブメディアなど、いろいろな媒体が取材をしたり、レビュワー(批評家)を派遣しては、記事にしたりします。
このレビュー(批評)もまた、とても重要です。良いレビューが出ると、加速度的に集客が伸びることもありますし、酷評されるとそれ以降チケットがあまり売れなくなってしまうこともあります。
アーティストにとって、レビューは決して無視できないものであり、その年の興行を左右する大きな影響力を持つものです。
私もこれまでにいくつもの作品を上演し、実にいろんなレビューをもらいました。
「ハローキティを生んだ国から、さらに可愛いものがやって来た!」
「大人も子供も、パフォーマーもドラッグ好きも楽しめるショーに出くわすことはそうそうない。『ミスしゃっくりの幸せな一日』はそんな稀有な逸品。東京から来たクラウンが、可愛いらしくてとにかく可笑しい、テンポのいいパフォーマンスを見せてくれる」
「トトロとビョークを足したような生き物が現れた」
……若干、妖怪みたいな扱いが多いですね……。
質の良いレビュワーの文章はとても知的で美しく、たとえばこちらも私のお気に入りの一文。
"Yanomi may be the clown, but you’d be a fool to miss this performance!” -DC Theatre Scene
「ヤノミは道化かもしれないが、もしこのパフォーマンスを見逃すとしたらあなたは馬鹿者だ。」
ツアーアーティストたちとの友情
さて、プロのレビューがいくつももらえたり、メディアにインタビューが掲載されたりと、ソロ作品に対しても非常にフェアな扱いをしてくれるフリンジですが、ほかにも素敵なポイントがあります。
私が北米フリンジを好きな理由の一つは、アーティスト同士の横のつながりが非常に豊かであることです。
とある人形劇を観に行った時のこと。
客席の最前列で観劇していた、白塗りメイクの私たち。
度肝を抜かれるような素晴らしいそのショーが終わると、アーティストたちがカーテンコールで挨拶をしました。
フランス語でさっぱりわかりませんでしたが、突然彼らが私たちを指差し、笑顔で紹介してくれたのです。
私たちはわけがわからないままにその場に立ち、そこにいた観客があたたかい拍手を送ってくれました。
フリンジのアーティストたちは、ベテランであればあるほど、自分たちだけでなく、ほかのアーティストの作品をも紹介し、リスペクトを込めて観客に宣伝することがあります。
コメディアンが、親しい友人のミュージカルを紹介することもあれば、シリアスなドラマに出演している女優がまったく異なるジャンルのダンス公演を宣伝することもあるのです。
私はこの慣習にとても感動し、それ以来自分のカーテンコールでもほかのアーティストを可能な限り紹介するようにしています。
北米フリンジの参加にはいくつかの枠があります。
✓地元のカンパニー
✓カナダ(またはアメリカ)国内のカンパニー
✓海外のカンパニー
私はもちろん海外から参加しているカンパニーです。
そして、何百何千といるフリンジ・アーティストたちの中には、毎年毎年フリンジでツアーを回り、それだけで生計を立てているツアーアーティストもほんの一握り存在します。
私も何度かツアーを回りました。その過酷さと美しさを語るには七日七晩かかりますが、ツアーアーティストたちは私にとって生涯の家族です。
今回もお楽しみいただけましたでしょうか?
次回はダイナミックなツアーの面白さと、そのユニークなシステムについてもお話していきたいと思います!
皆さんの庭に、いろんな草花が元気に育ちますように。
心にも美しい花が咲きますように!
ではまた、来週!
Stay safe, Love & Beer!