皆さまはじめまして!コメディエンヌのヤノミです。
身体の80%はビールでできています。
友人からは「ヤノミちゃんって夜呑むからヤノミなの?」と言われますが、名前はカタカナです。
おんせん県の出身で、英語と大分弁、広島弁も少し話せます。
好きなことばは「Take your time(ゆっくりでいいよ)」。
あなたのペースでいいよ、慌てないでね。
そう言われるとほっとします(とくに海外では)。元来のろまなものでして……。
世界で演劇を上演するコメディエンヌの私が
●演劇の魅力や楽しみ方
●世界の演劇
●子どもやファミリーのための演劇
●ろう者のための演劇
など、「演劇」にまつわるそれぞれの成り立ちや魅力をお話していくコラムを連載することに相成りました。
演劇ってなに?どんな風に楽しむの?どんな世界なの?
知っているようで意外と知らない、そんな「演劇」の世界について、私と一緒に旅をする感覚で楽しんで貰えたら嬉しいです。
コメディエンヌですが、小心者です
さて、初回なので自己紹介と、コメディエンヌとして活動を始めた頃をメインにお話していきます。
私は小心ズ(しょうしんず)というユニットで、長年にわたり世界中でコメディを上演しております。
演劇の世界に生きておりますが、女優などと大それたことは言わず「コメディエンヌ」と自称しております。
そして、お察しの通り、小心者です。
舞台の本番前は舞台袖で具合が悪くなり「やっぱり今日はやめておいた方がいいんじゃ……」「今からでも逃げ出すべきなんじゃ……」と顔面蒼白で思うのです。
(あ、白塗りメイクの場合もあるので文字通り顔は真っ白ですね……)
ただ、ひとたび舞台に立つと驚くほど平気で、イキイキと大きな態度で振舞うので、私が小心者だということをあまり人は信じてくれません。
小心者=感受性ゆたかな人たちのこと
私は、小心者って実は世の中にたくさんいるのだと思っています。小心者だけに、ビクビクと隠れて暮らしているのです。だって、小心者は大勢の前で「私、小心者なんですううううう!」とアピールしたりはしないものですよね、小心者ですから。
・シャイ
・臆病
・時に心配性
・ちょっとばかり悲観的
・怖がり
・他人のことを気にしすぎる
・小さなことにドキドキする
・余計なことを果てしなく考えてしまう
小心者、それは感受性ゆたかな人たちのことではないかと、私は思うのです。
「とるに足らない些細な事に心を震わせる、愛すべき人たち」
そんな人たちが、この世界をほんの少し、こっそりと愉快に幸せにするのではないかと思っているわけです。そして、ささやかな事のなかにこそ、この世界の美しさが隠れているのではないかな、と。
笑いとビールを愛するわたくしヤノミが、世界中を旅してコメディを上演しながら体験し感じてきたことを、これからのんびりとお伝えしていきたいと思います。
劇場を飛び出してスタートした「コメディエンヌの道」
私が小心ズを始めたのは2005年のことでした。同じく小心者の相方と女2人のユニットとしてスタートしました。
東京で劇団に所属していたころ、劇場に足を運んでくださるお客様はいつも同じ顔触れだなぁと思っていたんです。
人のあふれる東京であっても、人生で一度も劇場で演劇を観たことがないという人たちがたくさんいるのだということを知ったのもこの時期です。
日本人にとって「演劇」というのは今なお遠い存在であり、ハードルが高いと思っている人も多い。
「よし、それなら劇場を飛び出してまだ見ぬお客様にこちらから会いに行こう!」
「舞台セットも照明もいらない、身ひとつでできる演劇を創ろう!」
「大所帯の劇団ではなく、小回りのきく2人でどこにでも行こう!」
演劇をもっと身近なものとして楽しんでほしい。
そんな思いで劇場を飛び出したのです。小心者のくせに思いついたとなるとこれがまた極端なことをやりがちなのです。
20代というのは無鉄砲なものですね。
……いや、今もじゅうぶん無鉄砲であります。
そんなこんなで私たちは下北沢の駅前で路上パフォーマンスをやったり、イギリス人オーナーが経営するバーで上演したり、ライブハウスでロックバンドの間に挟まってコメディをやったりしはじめたのです。
最近でこそ、いろいろな場所やスタイルで上演される演劇が増えてきましたが、当時はそんなところで演劇をやっていた人たちはとても少なかったと思います。
「投げ銭」というものを初めていただいたのもこの頃です。
劇場では観客はあらかじめチケットを購入して観劇します。でも、路上パフォーマンスは基本的に通りすがりの人たちが相手です。
観終わって面白かったと感じたら、それぞれの判断でそれぞれの好きな額をパフォーマーに渡す。それが「投げ銭」です。
主にお金が一般的ですが、
・高校生の集団から飲みかけのジュース
・ホームレスのおじさんから、高級なチョコレート
・手作りのプレゼント
・手紙
などなど、お金ではない様々なものを投げ銭代わりにくださるお客様もたくさんいました!
また、バーやライブハウスで上演すると「あんたたち、面白かったよ!」とお客様がビールをごちそうしてくれることもよくあります。
イギリス人オーナーのバーには外国のお客様がたくさんいて、みんなワイワイと好き勝手に楽しんでいましたが、私はそこで「面白いショーをやるとビールをおごってもらえる!」ということを知り、とても感動したのを覚えています。
もちろん、チケットをあらかじめ購入していただくショーもあれば、終演後に主催者からギャラをいただく場合もあります。
もし毎回ギャラがビールだけだったらもちろん生きていけませんが、その無形の価値交換(パフォーマンスへの称賛としてのビール)が、私はなんだかとても好きなのです。
もちろんキャッシュも好きですが。
キャッシュ歓迎。ビールも歓迎。
オーナーが「イラシャマセー」以外、日本語をまったくしゃべらない人であったことや、お客様の半分が外国人だったこともあり、小心ズの演目ははじめからセリフを使わない無言劇となりました。
その代わりに身体表現や音楽や歌や効果音、仕掛けのある小道具や、ユニークな衣装やメイクを駆使したコメディとなり、それが結果的に「世界中で上演できるコメディ」となっていったのです。
たとえばこんな感じ!
(YouTubeがまだ世の中に知られていなかった2007年、YouTube主催のキャンペーンイベントに出演した際の動画)
そして、そんな小心ズが海外に飛び出すことになったのですが、ボリュームが出そうなので、今回はこの辺で。
では、続きはまた来週!
Stay safe, be happy.