「毎年3,000人が死ぬ病気、子宮頸がん①」

クマと注射器 おしゃべり婦人科医の 「聞いて欲しいアソコの話」

みなさん、こんにちは!

大阪なんばクリニック 婦人科医長の藤田由布です。

おかげ様でカーテンの向こう側シリーズに反響をいただき、ありがとうございます。

婦人科というプライベートな診療科のことに興味を持っていただけた、もしくは「そうか、こんな感じなんだ」と少しでも恐怖心や抵抗感が少なくなっていたなら幸いです。

▼婦人科の裏側を知れる興味深い内容です▼
「カーテンの向こう側①」
「カーテンの向こう側②」

新たに承認された子宮頸がんワクチン「9価ワクチン」とは

予防接種

さて、今週のテーマは「子宮頸がん」です。

今までも何度か子宮頸がんについては折に触れてお話してきましたが、今回は掘り下げてお話できればとパソコンに向かっています。

【子宮頸がんワクチン】命を守る予防接種です

子宮頸がん9価ワクチン、やっと承認です。

何のこと?と言いますと、子宮頸がんのワクチンにはいくつか種類がありまして、日本で認可されていたワクチンは「2価HPVワクチンのサーバリックス」「4価HPVワクチンのガーダシル」がありました。

今回新たに「9価ワクチン『シルガード9』(一般名:組換え沈降9価ヒトパピローマウイルス様粒子ワクチン)が2020年7月21日に正式に日本で承認されたのです。

正直申し上げますと「やっとか」という心持です。

なぜなら、子宮頸がんワクチンの世界スタンダードは9価だからです。

男性も接種している国も多い中、日本は4価ワクチンのみ承認されていて、しかも接種率は悲しいことに0.1%以下です。

“4価ワクチン”は頸がんの原因となるヒトパピローマウイルスの60%しかカバーできないのですが、“9価ワクチン”は95%カバーします。

ワクチンの種類

もう少し具体的に紹介しますね。

HPVワクチンは子宮頸がんの原因となるHPV(ヒトパピローマウイルス)への感染を防ぐワクチンなのですが、実はHPVは100種類以上あるのです。

その中で子宮頸がんを引き起こすリスクの高いウイルスが、16型や18型など約15種類あるとされています。

このうち2種類のウイルスを予防するのが2価ワクチン、4種類予防するのが4価ワクチン、そして9種類予防するのが9価ワクチンというワケです。

☑サーバリックス(2価ワクチン
・2種類(16・18)のウイルスを防ぐ
・約50~60%の予防効果

☑ガーダシル(4価ワクチン)
・4種類(16・18・6・11)のウイルスを防ぐ
・約50~60%の予防効果

☑シルガード9(9価ワクチン)
・9種類(16・18・6・11・31・33・45・52・58)のウイルスを防ぐ
・約90~95%の予防効果

撲滅寸前なのに、日本では毎年3,000人以上の女性が亡くなる理由

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子宮頸がんの原因はヒトパピローマウイルス、略してHPVですね。

これは殆ど性交渉でしかうつりません

そして、フィンランドやオーストラリア、アメリカなどの先進国ではもうすぐ子宮頸がんが撲滅されると言われる中、日本では毎年3万人が頸がんを宣告され、毎年3千人の若い女性が亡くなる、異様に身近な「癌」なのです。

日本では、1994~1999年生まれの女性のみ、定期接種してきた過去があります。

2000年以降、日本はワクチンの積極推奨を手放し、子宮頸がんの症例数は近年もどんどん増加し続けているのに沈黙を続ける日本行政。

国際機関から名指しで非難されてもなお、子宮頸がんワクチンの積極推奨に我関せずの日本

子宮頸がんワクチンを推進してこなかった日本行政に対して日本の女性たちは訴訟すべきである、と声をあげる医師さえもいます。

なぜ、先進国であるにも関わらず、こんなにも子宮頸がんワクチンの接種が異様に遅れているのか……

今回は「子宮頸がん9価ワクチンが承認された」という一歩であり、これは世界スタンダートに少し近付けただけにすぎません。

なぜなら、日本行政はまだ積極的に定期接種の奨励するには至っておらず、2020年現在も日本は子宮頸がんワクチン接種率は0.1%以下なのです。

ワクチンの副反応として訴えられている多様な症状は「心身反応」「機能性身体症状」であることが調査結果で明らかになっているのに、です。

まだまだ、子宮頸がんワクチンに対する認識をアップデートできていない環境があるのが実情です。

男性こそ、子宮頸がんワクチンの接種を!

クマと注射器

前述しましたが、世界では男性の子宮頸がんワクチン接種も普遍的になってきています

なぜ、男性も子宮頸がんワクチンを接種するといいのでしょうか?

妻が子宮頸がんを発症したら……そう、それは夫がうつしたウイルスのせいかもしれません

この事実はあまり知られてませんよね。

男性にしてみたら疑いたくなる事実だと思います。

このウイルスに感染してから頸がんが発症するまでは、数年~十数年と言われています。

逆算したら、必ずしも夫がうつしたウイルスのせいかどうかは定かではありません。

子宮頸がんの診断をご夫婦で聞きに来られる際、やはり結構気を遣います。

そりゃそうですよね、愛する妻を癌にしたのは、夫が持っていたウイルスのせいかも知れませんから

でも、そんなことは口が裂けても自分の患者には言えません。

男性が子宮頸がんワクチンを打ったら、愛するパートナーを子宮頸がんから守ることができるうえに、男性自身の肛門癌や咽頭癌も予防できます

日本以外の77カ国が男性へのHPVワクチンを承認しており、そのうち24カ国が公費補助しています。

女性を大事にするブラジルなどは、当たり前のように男性も9価ワクチン打っています

日本のような女性地位が低い国では、男性がHPVワクチンを打つなんて議論にもなりませんよね

男女とも9価ワクチンを当たり前に定期接種する、こんな簡単な事が日本では10年単位で遅れているのです。

こういう部分で、日本はまだまだ女性地位が低いこと、男女ともに他人事であることが伺えます。

もちろん、我々医療従事者が声を大にして、日本の行政をも動かしていかなくてはいけないことは周知の事実です。

ですが、日本人女性も、そして男性も、もっと身近な問題として、自分自身に起こりうる当たり前の事象として「子宮頸がん」に向き合っていかなくてはと思います。

1日でも早く子宮頸がんワクチンが当たり前の世の中になればいいと心から思います。

……と、長くなってまいりましたので、今週はこの辺で!

再来週、またお会いしましょう(*^-^*)

yu

婦人科医/藤田 由布(ふじた ゆう)
〇大阪なんばクリニック 婦人科/医長
〇ヨーロッパと日本で医師免許を取得/気軽にだれでも来れる敷居の低い婦人科つくりを目指す
青年海外協力隊でアフリカのニジェールへ赴任後、アフリカ未開の土地で10年間活動。アメリカ財団やJICA専門家などの仕事を経て、ヨーロッパで医師になり、その後日本でも医師免許を取得する実力派。
大阪なんばクリニック/TEL:06-6648-8930
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