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小心ズ、ワールドコメディの旅 大人のための舞台芸術③スタンダップ・コメディ

Paul Strickland オーランド2010年

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皆さま、こんにちは!

お元気ですか?

友人から新鮮な野菜と果物がどっさり届いて、ハッピーなヤノミです。

何よりも、手書きのお手紙がうれしかったです。

メールもLINEもうれしいけれど、お手紙はまた格別ですよね。

さて、今回も大人だからこそ楽しめる舞台芸術についてご紹介してまいります。

ジャンルはスタンダップ・コメディ

ビール片手にのんびりお読みくださいませ!

□ヤノミとは?
コメディエンヌ。アメリカ、カナダなどを中心に世界中でコメディを上演しているビール好き
□フリンジとは?
世界各地で開催される演劇祭。あらゆるひとに表現の場を与える、オープンでフェアなスピリットを基盤としている

ジョークの嵐に観客が大爆笑!スタンダップ・コメディアンの素晴らしい実力

大人気のスタンダップ・コメディアン Paul Strickland

大人気のスタンダップ・コメディアン Paul Strickland

私が「スタンダップ・コメディ」というジャンルにまともに出会ったのは、2010年のオーランド・フリンジでした。

それ以前にもバーなどで多少は観たことがありましたが、本格的にスタンダップの舞台公演(60分)を目の当たりにしたのは、それが初めてでした。

文字通りステージに立ち、マイク1本で観客を笑わせていくスタンダップ。

その笑いの間隔はとても短く、一流のコメディアンになると「10秒に1回以上」笑わせる、とも言われています。

また、スタンダップ・コメディアンのことを「コミック」と呼んだりもします。

前回ご紹介したストーリーテリングが、60分を通して笑いも含む大きな物語を語るのに対し、スタンダップではごく短いジョークが次々と繰り出されます。

セリフにすると実に2行くらいでひとつのネタになっているものもあります。

ポール(画像)のショーでは、満場の観客が爆笑につぐ爆笑のあまり、椅子から転げ落ちそうになっていました。

時には観客の笑いがしばらく止まず、ポールがそれを待たなくてはならないほど!

老いも若きも、男も女もLGBTもこれほど笑わせるとは、なんとすごいひとだろうと驚愕したものです。

そしてまた、彼の声もとてもいいのです。

タブーだからこそ面白い!?高度な話芸で笑わせるスタンダップ・コメディの魅力

フリンジの大スター Mike Delamont “God is a Scottish Drag Queen”

フリンジの大スター Mike Delamont “God is a Scottish Drag Queen”

スタンダップは基本的に、ことばの力で笑わせていく「話芸」です。

・ことば遊び(ダジャレやとんち、意図的な誤読など)
・皮肉(世間の常識や慣習、流行りのことなど)
・風刺(政治、文化、歴史など)
・自嘲(恋愛、夫婦関係、生い立ち、身体的なことなど)
・タブー(人種、宗教、国、地域など)
・下ネタ(性的なことなど)

などなど、その要素も多様です。

フリンジでは60分の公演が基本ですが、酒場やライブハウスなどではひとり5分の出演時間ということもよくあります。

瞬発力が非常に重要な芸でもある、というわけですね。

無言劇から一転!ヤノミ、スタンダップに挑戦する

ちなみに私が人生で初めてスタンダップに挑戦したのは、なんとNYでした。

深夜0時に始まるフリンジのキャバレーショーで、持ち時間は8分。

もちろん英語です。

そもそも当時は無言劇「ミスしゃっくりの幸せな一日」をやっていた私。

「普段とまるで違うことをやる」というお題に、対極のスタンダップを選んだはいいが、かつてないほど緊張したのを覚えています。

英語の辞書を引いては語源まで調べ、マクドナルドでネタを書き、何度も練習してセリフを丸暗記して臨みました。

本番では予想以上にウケたので、ものすごく!うれしかったです。

見知らぬ女性アーティストが「あなた!めちゃくちゃ面白かったわよ!」と声をかけてくれたり、その後に登場したプロのスタンダップ・コメディアンたちが次々と私の名前を出したりイジったりしてくれたのも忘れられません。

その数年後、調子に乗った私は日本語でのスタンダップ・コメディ「新郎新婦の入場です!」も始めました。

記念すべき人生初のスタンダップ・コメディ Frigid NY 2013年

記念すべき人生初のスタンダップ・コメディ Frigid NY 2013年

上記の要素にも挙げたように、数あるコメディのスタイルの中でも「タブーに触れる」というのは、スタンダップの特徴でもあると思います(タブーに触れない平和なスタンダップももちろんありますが)。

多くのコメディには皮肉を込めたものの見方や、常識とはまったく異なる視点などが入っていますが、スタンダップでは世間のタブーに比較的「直接」触れて、それを笑いに換えていく、という姿勢が見られます。

たとえば、アメリカにおいてのタブーの筆頭に、人種差別というものがあります。

この問題は非常に根深く複雑で、地域によっても各家庭によっても、もちろん個人によっても考え方は様々です。

その人種差別をネタにするコメディアンも多く観てきました。

こうしたタブーを強烈に扱うスタイルを「inappropriate=不適当な、ふさわしくない」と表現することもあります

日本語のニュアンスだと「不謹慎なスタイル」という感じでしょうか。

意図や意志をもって、あえて不謹慎なやり方でタブーに触れる。

当然ながらこれは非常に高度かつリスキーで、笑いを生むどころか観客が怒り出して大騒動になったりすることもあります。

それならまだしも、そのジョークを聞いた観客が傷ついて泣き出すような場面すらありました。

笑いというのは、とてもデリケートなものでもあります。

何をネタにするのか、そこにコメディアンの思想や生き方がダイレクトに反映されます。

スタンダップ・コメディがもつ、あらゆる可能性

女性コミックのキャメロン(右)とポートランド2013年

女性コミックのキャメロン(右)と ポートランド2013年

アメリカなどでは政治ネタはもはやタブーですらありません。

コメディアンたちはいつでも自由に政治家や政党や、その支持者をネタにし、笑いにします。

LGBTネタも、それほどタブーではありません。

どんな雰囲気か、ちょっと動画をご覧ください。

こちらは私が2013年にポートランドで出会った女性のコミック、キャメロンです。

彼女はレズビアンで、ロックでそりゃもうかっこいいのです。

【Cameron Esposito Stand-Up】

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私個人は、人種差別ネタはあまり好きではありません。

でも、それが全面的に絶対にダメだとも思いません。

下ネタもあまり好きではありません。

でも、それが全世界共通でウケやすいことも知っています。

私にとって、コメディとは「ゆるし」です。

人間の愚かさ、弱さ、理不尽さ、哀しさ。
人生の厳しさ、辛さ、不平等。
世界の複雑さ、難しさ。
そんなものを笑いに換えてゆるすこと。受け容れること。
現実を笑い飛ばして前を向く力に換えること。

異なる立場の人間同士が、笑いをもってお互いをゆるし、受け容れ、出会い、対話するきっかけになること。

コメディには、突きつめればそんな可能性があるのではないかと思っています。

そして一流のスタンダップ・コメディアンたちは、時に辛辣で不謹慎なスタイルをとっていたとしても、他者への尊敬と人類全般への愛のようなものを欠かしてはいないように感じるのです。

ややや!

今回もうっかり長くなってしまいました。

好きなものについて短く書くのはとても難しいことですね。

来週もスタンダップの続きを書こうかな?

では、どうぞ皆さま、笑い多きごきげんな毎日を!

yanomi

小心ズ/ヤノミ
〇コメディエンヌ/シルクドソレイユ正式登録アーティスト
〇小心ズ/世界各国の演劇祭に出演中
無言劇からバイリンガル司会まで、国内外にサプライズと幸せを運ぶ天衣無縫のコメディエンヌ。世界各地の数々の賞を受賞する実力派。中学校と高校の教員免許を持つ、世界で活躍するアーティスト。小心ズオフィシャルサイト

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